ホテル体験の本質とは何か
―ホテルにおける体験価値をどのように捉えていますか。
ホテルの価値は、単に「泊まる」という機能にあるのではありません。むしろ重要なのは、到着から出発までのすべてのタッチポイントが連続し、一つの体験として統合されていることです。
チェックインの瞬間、客室に入ったときの第一印象、レストランでのサービス、廊下で交わされる何気ない挨拶、そしてチェックアウトに至るまで。そのすべてが分断されたものではなく、一つの流れとしてゲストの中に残っていきます。
たとえば、同じコーヒーであっても、その味そのもの以上に、それを誰がどのように提供したのか、どのような言葉が添えられたのか、どの...
ホテルは、歴史を更新できるか。パリ ル グラン総支配人が語る「価値」の本質【後編】
価値はどのようにして生み出され、更新され続けていくのか。
後編では、「体験とは何か」という問いを起点に、ホテルという存在の本質へと踏み込んでいく。滞在のすべての瞬間はどのように設計され、記憶へと変わるのか。歴史あるホテルにおいて、何を守り、何を変えるべきなのか。そして、ホテルはこれからどのような役割を担い続けるのか。
ロール氏の言葉から見えてくるのは、ホテルが単なる宿泊施設ではなく、「時間」と「記憶」を扱う装置であるという視座である。日々の運営の中で積み重ねられる意思決定と体験の連続こそが、やがて新たな歴史となる。後編では、そのプロセスと思想に迫る。ポートレート写真:大橋マサヒロ