ホテルイベントレポート 株式会社JR西日本ヴィアイン「やめる仕事アワード」

ヴィアインが第1回「やめる仕事アワード」開催、65種の業務内容を見直し時間の余白の創出を目指す

初開催として732案の応募が寄せられた「やめる仕事アワード」

 株式会社JR西日本ヴィアイン(本社・大阪府大阪市)は5月13日、大阪ステーションホテル(大阪府大阪市)7階宴会場・SUNにて「やめる仕事アワード」の表彰式を行った。

 同アワードは同社が初開催として手掛け、社内において各々が日々の業務で感じている業務負担や違和感、改善の声を広く集め、やめるべき仕事や変えられる仕事を見つけ出す取り組み。

 役職や立場に関係なくアルバイトを含めた全社員が応募することができ、その声が経営陣に直接届く仕様。改善を通して「時間の余白」を生み出し、その時間を宿泊ゲストに向き合うことや、ホテルの価値向上につながる活動に充て、働き甲斐を高めていくことを目的とする。

 応募に際し、「やめる仕事・見直したい仕事の案」「各案における課題内容と改善することで得られる効果」をセットで投稿し、その案が本質的な問題であるか、他問題にも副次的に影響するか、会社の方向性に沿うものか、改善することでどれだけの時間を生み出すことができるかが評価項目となった。

 そして、4カ月間の募集期間を経て多くの従業員からやめるべき業務、ITツール、システム導入、風土、文化などの見直し案として、732案の応募が寄せられることとなった。その上で65枚・計208案(重複あり)を喫緊の課題の「やめる仕事カルタ」として整理され、そのすべてを改善していくことが指針となった。

 応募者の中には1人の社員が78案を応募し、そのうちの54案が評価対象となり、最終的に21案がカルタ化されるといった熱意あふれる例もあった。また、過去に改善要求をしていたものの通らなかった案が、今回を機に改めて再提出をし、採択された例もあった。
 表彰式ではノミネートされた65種の内容に関し、特に評価点数が高かったものを表彰し、賞ごとにトロフィーと賞金が授与された。なお、受賞内容の一部は以下となる。

「最優秀賞」~全応募のうち、総合的に最も優れた案を表彰~
 ●ヴィアインシングルという名称って変えられませんか?

「支配人賞」~支配人が選出した「やめる仕事」を表彰~
 ●朝食クーポン、現金キャッシュバックを支配人前渡資金から拠出することってやめられませんか?

「はたぴー賞」~評議会事務局が選出した「やめる仕事」を表彰~
 ●役職で呼び合う文化って変えられませんか?

〈評議員特別賞〉~同社各部の部長が選出した「やめる仕事」を表彰~
「みんなが笑顔になるで賞」
 ●タオルなどの追加アメニティの有料対応ってやめられませんか?
「ヴィアインAI(愛)たっぷり賞」
 ●AIツールを個人判断で利用するのってやめられませんか?
「受話器を置いて笑顔を広げま賞」
 ●外線電話ってやめられませんか?
「みんなの想い賞」
 ●宿泊税の現地精算ってやめられませんか?
「Culture Transform賞」
 ●24時間365日、年中無休での営業ってやめられませんか?

左から代表取締役社長の柴﨑 紳一朗氏、最優秀賞を受賞した営業戦略部の村越 加苗氏

 最優秀賞を受賞したのは同社 営業戦略部の村越 加苗氏。今年2月に入社した同氏は日々のレベニュー業務を通じて、普段から品質の高い客室・空間を提供しているからこそ、その魅力をゲスト側によりわかりやすく伝えたい、との思いのもと投稿。経営陣は同案を受けて、現在の客室タイプの多さがルームコントロールの煩雑さにつながっていると見直され、第1回目の最優秀賞へと至った。

 総評において同社代表取締役社長の柴﨑 紳一朗氏は「これまで、この仕事はもうしなくていいんだよ、と伝える機会はあまりありませんでした。AIの台頭を含めて時代が目まぐるしく変化している中、次の時代に対応していくためにはまず、時間の余白をつくることが不可欠です。お客さま一人一人に向き合い、しっかりとおもてなしをする。そのためにも、最前線の現場にたっている皆さんだからこそ、経営陣には気づけない着眼点でその時間をつくるための案をもってくれていると考えました。ヴィアインの未来をつくっていくのは皆さんです。自分たちの仕事の課題を、自分たちで見つけて改善していく、それがこれからのヴィアインの未来だと思っています」と激励を発した。

 柴﨑氏は寄せられた732案すべてに目を通していたと述べる。そして同アワードを1回で終わるのではなく、2回目、3回目と続けていくことで業務効率化を追求していく姿勢だ。

 今回ノミネートされた65案のうち、筆者が印象的であったのは「タトゥーのあるお客様を大浴場利用不可としているルールって変えられませんか?」であった。シール着用の推奨を含めて、大浴場を有する多くの宿泊施設で当たり前のように目にする規定であり、増加傾向にある欧米系のインバウンドにとってファッションの一部となっているケースもある。以前までの慣習を改めて見直すことにつながった同アワードの取り組みを、ぜひ多くのホテルチェーンで取り入れていただきたい。

文・オータパブリケイションズ 臼井

HOTERES編集部

編集部

ホテル専門メディア『HOTERES』の編集チーム。創刊60年の専門誌「月刊HOTERES」と「HOTERES Digital」を横断し、経営、開発、投資、ブランド戦略、運営、食、人材といったテーマを軸に、取材および調査・分析を行っている。業界をリードする経営者やトップマネジメント、事業者・運営会社・投資主体への取材に加え、日本国内のホテル新規開業動向、ホテルチェーン一覧、売上高ランキングなどのデータ収集・整理を継続的に実施。マーケット・リサーチの視点も取り入れながら、ホテルを取り巻くビジネスの構造や意思決定の変化を多角的に提示している。