アールエヌティーホテルズ㈱の緑川 拡伸氏(左)とビズメイツ㈱の竹原 悠介氏(右)
「日本語力」が課題だと思っていた
——外国籍人材の採用を進める中で、どのような課題が見えてきましたか。
緑川 2023年ごろから外国籍社員の採用を積極化しました。当初、一番の課題だと思っていたのは日本語力です。マニュアルやホテルシステムも日本語が中心で、領収書の宛名を聞き取れても漢字にできず、お客さまをお待たせすることもありました。ただ、より難しかったのは文化による受け止め方の違いです。困っているスタッフを日本人の先輩がフォローしたところ、自分の仕事を奪われた、助けを求めていないのに入ってこられたと受け取られ、摩擦になったこともありました。日本人同士なら善意として伝わる行動が、相手には侮辱と映ることがあったのです。
竹原 当社のオンライン日本語レッスン「Zipan(ジパン)」では、日本語を知っているかではなく、その日本語を仕事でどう使い、成果につなげるかを重視しています。一定の日本語力を持つ方にも、異文化理解や上司・同僚とのコミュニケーションを含めて学んでもらいます。
語学力より先に、コミュニケーションが変わった
——Zipan導入後、現場にはどのような変化がありましたか。
緑川 例えば上司に質問するとき、いきなり本題へ入らず、今、お手すきですかと一言クッションを置く。受講者が実践すると、すごくうまくいったと話していました。まだ受講から半年ほどで、日本語力が劇的に上がった段階ではありません。一方、質問や周囲との接し方は目に見えて変わっています。どう話しかければよいかが分かることで安心して質問でき、その安心感が学習意欲にもつながっています。
竹原 語学力は短期間で一気に伸びるものではないからこそ、継続できる設計が重要です。ビジネス経験を持つトレーナーから、接客だけでなく上司や同僚とのコミュニケーションまで実務に沿って学べることも特徴です。
問題の原因を「言語・文化・個人」に切り分ける
——今回の取り組みで、最も大きな気づきは何でしたか。
緑川 私自身、最初は言語が問題だと思っていました。しかし実際には、文化的背景を知らなかったことが本質だったケースが多かった。日本語力なのか、文化の違いなのか、本人の考え方なのかを分けないまま対応していたんです。外国籍スタッフは文化の違いでストレスを感じても声に上げにくく、会社側は日本語や本人の問題として別のところを指導してしまう。原因を切り分けられるようになったことで、伝え方や指導の仕方が変わり、トラブルも明らかに減ってきました。
ビズメイツ㈱ ランゲージソリューション事業本部 事業企画室 ディレクター 兼 法人営業グループ 営業企画マネージャー 竹原 悠介氏
アールエヌティーホテルズ㈱ 東日本営業部 第二地区 統括支配人 兼 リッチモンドホテル成田 総支配人 緑川 拡伸氏
日本人側の「察してください」も見直す
——受け入れる日本人スタッフ側にも変化はありましたか。
緑川 以前は、指示したのに、なぜ動かないのかと感じることがありました。でも実は、指示する側が日本文化を前提にした抽象的な伝え方をしていた。ここから先は察してくださいではなく、誰が聞いても同じ意味になるよう具体的に伝えるようになりました。逆に日本人側が外国籍スタッフから学ぶこともあります。海外からのお客さまならではのご要望に対し、できないことを率直にお伝えしたところ、ご納得いただける場面もありました。日本特有の、結論を明言しない曖昧な表現は、時に相手を不安にさせることもあると学びました。
外国籍人材を「労働力」で終わらせない
——今後、外国籍人材をどのように育成していきますか。
緑川 採用して人手を確保して終わりではありません。一人一人がキャリアを描き、将来は時間帯責任者、部門支配人、総支配人として活躍できる環境をつくりたい。外国籍スタッフだけに適応を求めるのではなく、受け入れ側も学び続け、国籍にかかわらず力を発揮できる組織を目指します。
竹原 企業側も、外国籍人材を労働力として見る段階から、日本に定着して、将来のキャリアやリーダーを目指してもらう方向へ変わりつつあります。10月にはホテル向けの新教材も予定しており、正確な引き継ぎだけでなく、日本で働き続ける中で感じる課題など、語学の先にある「ホテルでどう働くか」まで支援していきます。