鎌倉駅徒歩3分、静けさと“素”を磨く「レイサースイート鎌倉」 客室とF&Bから見る滞在価値

クリアルホテルズは2026年5月18日、神奈川県鎌倉市に「レイサースイート鎌倉(LACER SUITES KAMAKURA)」をリブランドオープンした。JR鎌倉駅西口から徒歩3分という利便性を備えながら、周辺は古くからの街並みが残る閑静なエリア。全36室の客室は「素」をイメージしたシンプル・ミニマルな空間で構成される。HOTERES編集部では実際に宿泊し、客室、朝食、カフェを中心に、その滞在価値に迫る。

駅近でありながら、観光地の喧騒から距離を置く

「LACER」はフランス語で「結ぶ」を意味し、クリアルホテルズが2025年に立ち上げたホテルブランド。無駄のない本質的な顧客価値をベースに、宿泊者とホテル、旅の感動と宿泊者自身を“結ぶ”ことを掲げる。鎌倉での一棟では、その思想を客室だけでなく、立地や食を含めた滞在全体へ落とし込んでいる。
同ホテルの特徴としてまず挙げられるのが立地だ。JR鎌倉駅西口から徒歩3分と電車でアクセスしやすく、市内観光の拠点として動きやすい。一方、ホテルが位置する御成町は、駅前からほど近いにもかかわらず、周辺には比較的落ち着いた街並みが広がる。公式にも「古くからの佇まいを残す閑静なエリア」と位置付けている。
実際に滞在すると、駅からの距離の近さに対して館内外は静かで、観光地の中心部に滞在していることを過度に意識させない。日中は鎌倉観光へ出掛け、ホテルに戻ってからは静かな環境で過ごすという切り替えがしやすく、観光拠点としての機能性と休息環境が両立している印象を受けた。
客室は16~32㎡、6タイプ全36室。内装は色数を抑え、素材の質感を生かしたシンプルな構成。室内照明も比較的光量を抑えており、華美な演出を加えるというより、滞在中の情報量を減らし、落ち着いて過ごす方向へ空間を整えている。

テレビを置かない客室、「情報を減らす」という設計

客室で特徴的なのが、全室にテレビを設置していない点だ。
現在のホテルでは、客室テレビは番組視聴だけでなく、館内施設やレストラン、各種サービスなどを表示する情報端末として活用されるケースも多い。その中で、テレビそのものを客室から外していることは、レイサースイート鎌倉の客室づくりを象徴する要素の一つといえる。
テレビの有無そのものが宿泊価値の優劣を決めるわけではない。ただし、同ホテルの場合は低照度の照明やミニマルな家具構成と組み合わせることで、客室内の視覚的な情報量が抑えられている。取材時の滞在でも、客室に戻った後は自然と静かに過ごす時間が生まれ、ホテル側が掲げる「素」というコンセプトと実際の空間設計との間に大きな乖離は感じられなかった。
一方、テレビを館内情報の入口として使わないのであれば、必要な情報をゲストへどのように分かりやすく届けるかも運営上のポイントとなる。設備を増やすことだけでなく、何を置かないかまで含めて客室体験を考えている点は、「無駄のない本質的な顧客価値」を掲げるLACERブランドの方向性とも重なる。

小規模ホテルでもF&Bを“つくる” 前日から仕込む朝食

今回の滞在で、客室と並んで印象に残ったのがF&Bだ。1階レストランでは朝食とカフェを営業。朝食では「鎌倉野菜のしゃぶしゃぶ」を中心に、サラダ、温製料理、焼き魚などをビュッフェ形式で提供する。魚介と鶏のうま味に天然塩を合わせた特製クリアスープに、好みの野菜をくぐらせるスタイルで、地域の食材を取り入れながら朝食そのものに体験性を持たせている。
取材時の説明によると、朝食は前日から仕込みを行い、館内に設けたキッチンでシェフが調理する。実食すると、単純に品数を増やすことを目的としたビュッフェというより、一品ごとの調理を意識した構成だった。36室というホテルの規模を考えても、F&Bを付帯的なサービスとして簡略化せず、厨房機能を持って食の品質をつくり込んでいる点は注目したい。
13時から17時までは同じレストランをカフェとして営業し、パティシエによる自家製ケーキなどを提供する。公式サイトではショートケーキ、バスクチーズケーキ、シュークリーム、アフォガートなどを紹介しており、カフェは660円から。朝食は大人3,080円で、宿泊者以外も曜日や混雑状況などの条件付きで利用できる。
宿泊者だけに閉じたF&Bとせず、外来利用も受け入れることで、ホテルと地域との接点にもなり得る。取材時に確認した館内調理の体制や実際の料理内容まで含めると、価格設定についてもホテル内F&Bとして利用しやすい水準に抑えている印象だ。
レイサースイート鎌倉は、大規模な付帯施設や派手なコンテンツを重ねて滞在価値をつくるホテルではない。駅から近いこと、夜は静かに過ごせること、客室の情報量を抑えること、そして朝食やカフェを館内で丁寧につくること。一つ一つはシンプルだが、それぞれが同じ方向を向いている点に、このホテルの個性がある。
鎌倉という国内有数の観光地にありながら、滞在そのものを過度に演出しない。その引き算が、結果としてレイサースイート鎌倉の「休む場所」としての輪郭をつくっている。

広々としたカフェフロアは、宿泊客のみならず、地元住民や観光客にも愛される空間づくりが感じられる。
広々としたカフェフロアは、宿泊客のみならず、地元住民や観光客にも愛される空間づくりが感じられる。

レイサースイート鎌倉(LACER SUITES KAMAKURA)

Editor’s Note


■施設基本情報
施設名:レイサースイート鎌倉(LACER SUITES KAMAKURA)
所在地:〒248-0012 神奈川県鎌倉市御成町14-32
リブランドオープン:2026年5月18日
客室数:全36室
定員:80名
客室面積:16~32㎡
アクセス:JR横須賀線 鎌倉駅西口から徒歩3分
チェックイン:15:00
チェックアウト:11:00
駐車場・駐輪場:なし。近隣のコインパーキング・駐輪場を利用。
■客室構成・提供資料記載の参考価格
ダブル:4室、16㎡、定員2名、19,760円~
ツイン:10室、21㎡、定員2名、20,410円~
スーペリアツイン:8室、28㎡、定員2名、22,660円~
デラックスツイン:4室、32㎡、定員4名、26,410円~
クイーン:9室、21㎡、定員2名、20,410円~
コーナークイーン:1室、22㎡、定員2名、20,410円~
※提供資料記載価格は朝食付き・2名1室あたり・税込。デラックスツインは3名利用38,490円~、4名利用45,320円~。
※バリアフリー対応客室:209号室・ダブルルーム。
■レストラン
会場:1階レストラン
朝食:7:30~10:00
宿泊者最終入店:9:30
外来利用最終入店:9:00
朝食料金:大人3,080円、未就学児(3歳以上)1,100円、3歳未満無料
※外来朝食は月~土曜に利用可能、日曜定休。混雑状況により利用できない場合あり。
カフェ:13:00~17:00(L.O.16:30)
カフェ料金:660円~
■朝食・カフェ内容
朝食の中心メニューは「鎌倉野菜のしゃぶしゃぶ」。魚介と鶏のうま味に天然塩を合わせたクリアスープで野菜を味わう。鎌倉野菜や三浦の食材を取り入れたサラダのほか、焼き魚、さつま揚げ、肉じゃが、大豆ミートのチリコンカン、10種の具材のミネストローネなどを用意。カフェではショートケーキ、バスクチーズケーキ、シュークリーム、アフォガートなどの自家製スイーツを提供する。
■取材・試泊時に確認したポイント
・鎌倉駅から徒歩圏内である一方、ホテル周辺は比較的静かな環境。
・客室は全体的に落ち着いた色調で、照明の光量も抑えめ。
・客室テレビを設置していない。
・館内キッチンでシェフ、パティシエが調理・製菓を行う。
・朝食については前日から仕込みを行っているとの説明を受けた。
・実食した朝食、カフェメニューとも、施設規模に対してF&Bへの手間をかけていることがうかがえた。
・価格については「安価」と断定せず、提供内容・館内調理の体制を踏まえ、「ホテル内F&Bとして利用しやすい価格設定」と評価する。
■設備・アメニティ
Wi-Fi、冷蔵庫、湯沸かしポット、ドライヤー、個別空調、洗浄機付きトイレ、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、歯磨きセット、タオル、バスタオル、ナイトウェア、スリッパなどを用意。アイロン、ズボンプレッサー、変圧器などは貸し出し対応。
■公式サイト
レイサースイート鎌倉(LACER SUITES KAMAKURA)


松島基機

HOTERES編集部

編集部

ホテル専門メディア『HOTERES』の編集チーム。創刊60年の専門誌「月刊HOTERES」と「HOTERES Digital」を横断し、経営、開発、投資、ブランド戦略、運営、食、人材といったテーマを軸に、取材および調査・分析を行っている。業界をリードする経営者やトップマネジメント、事業者・運営会社・投資主体への取材に加え、日本国内のホテル新規開業動向、ホテルチェーン一覧、売上高ランキングなどのデータ収集・整理を継続的に実施。マーケット・リサーチの視点も取り入れながら、ホテルを取り巻くビジネスの構造や意思決定の変化を多角的に提示している。