海外レポート

ミラノサローネが示したホテルの未来像 ラグジュアリーは「空間」から「体験」へ

2026年のミラノサローネ会期中に強く感じられたのは、ラグジュアリーをめぐる価値観が、明確に転換点を迎えているという事実だった。 これまでラグジュアリーは、建築の完成度、インテリアの質、サービスの精緻さといった“空間の出来栄え”によって語られてきた。しかし会場で交わされていた議論の中心はそこではない。問われていたのは、空間そのものではなく「体験」であり、さらに言えば「体験がどのように編集されるか」であった。 何を所有するかではなく、どのような時間を過ごすのか。どのような順序で感情が動き、どのような記憶として残るのか。そうした問いが、異なる展示やプロジェクトの背後に共通して流れていた。 オスカル・ルシアン・オノ、アンナリーザ・ロッソ、そしてOMAのデイヴィッド・ジャーノッテン。三者の言葉はそれぞれ異なる立場から発せられていたが、その先にある風景は似ている。均質化された空間の時代から、個別に編集された体験の時代へ。その移行である。 この変化は、ホテル産業にとって単なるデザインの話ではない。むしろ経営そのものの前提を問い直す変化であろう。 現地取材・文:浦田薫
「ラグジュアリーとは旅である」 Oscar Lucien Ono(オスカル・ルシアン・オノ)/Maison Numéro 20(メゾン・ヌメロ20)が語る体験価値   Aurea, an Architectural Fiction Maison Numéro 20 Concierge   コンセルジュ Courtesy of Salone del Mobile.Milano ©Saverio Lombardi Vallauri   「ラグジュアリーとは、現実から少し離れ、時間を忘れられる旅のような体験です。」パリのデザインスタジオ メゾン・ヌメロ20を率いるオスカル・ルシアン・オノは、そう...
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浦田薫(Urata Kaoru)

浦田薫(Urata Kaoru)

東京生まれ、フランス在住。フリージャーナリスト、通訳・翻訳家。建築、デザイン、アート、工芸を中心に、日本語とフランス語で取材・執筆を行い、日本とフランスの専門誌に寄稿している。ものづくりを取り巻く社会や経済、文化とのつながりに関心を持ち、土地や人、創作の背景にある物語を訪ねながら取材を続けている。長年にわたり通訳・翻訳にも携わり、多様な文化的背景を持つ人々のコミュニケーションを支えてきた。趣味は、好奇心に導かれて散歩と旅を楽しむこと。新しい土地を訪れ、その土地ならではの文化や暮らしに触れる時間を大切にしている。