EUワインの多様性が開く、ホテル・レストランの新たな提案力

JFEX 2026で、EUワインの多様性と日本市場での可能性を紹介するセミナーが開催された。品質保証制度やサステナビリティ、北欧・中東欧ワインのテイスティングを通じ、ホテル・レストランの料飲提案につながる視点が示された。

JFEX 2026でEUワインの多様性を紹介

2026年6月25日、JFEX 2026において、欧州連合(EU)によるセミナー「知られざるヨーロッパ:EUワインの多様な魅力を探る」が開催された。本セミナーは、EUの農産食品が持つ魅力と豊かさを日本の消費者および事業者に伝える「The Perfect Match!」キャンペーンの一環として実施されたもの。EUワインの品質保証制度や日本市場における可能性に加え、北欧・中東欧ワインのテイスティングを通じて、ホテル・レストランの料飲提案にもつながる多様な選択肢が紹介された。

品質・本物・持続性・安全性を支えるEUの制度

登壇した駐日欧州連合代表部 通商部 上席通商担当官の小林恵氏は、EUワインの特徴として「品質」「本物」「持続性」「安全性」の4点を挙げた。EUでは地理的表示制度に基づき、原産地呼称保護(PDO)と地理的表示保護(PGI)が設けられている。PDOはブドウの全量が指定地域で収穫され、栽培から醸造、熟成、瓶詰めまでの全工程が同地域内で行なわれることが求められる。一方、PGIはブドウの85%以上が指定地域で生産され、より柔軟なワイン造りを可能にする制度である。
小林氏は、これらが単なる等級ではなく、地域とワインの結びつきを示す制度である点を強調した。フランスのAOC/AOP、イタリアのDOCG/DOC、スペインのDOCa/DO、ドイツのQbAなど、各国で培われてきた呼称制度もEU法のもとで整合され、テロワールや伝統を体系的に保護している。また、有機認証制度についても紹介された。EUの有機ワインでは、化学合成された肥料・農薬の使用禁止に加え、原材料の95%以上が有機認定を受けていることが求められる。

日本は「量より価値」を重視する重要市場

EUワインにとって、日本市場の位置づけも大きい。2025年のEUワインの対日輸出額は9億6100万ユーロで、EU域外市場では第5位、輸出額ではアジア最大のEUワイン市場となっている。日本市場は「量ではなく価値」を重視する市場であり、プレミアム化や産地への関心、本物志向といった消費傾向が、EUワインの強みと合致している。
EU全体では、PDO約1200件、PGI約470件を含む1670以上のGI認証ワインが登録されている。こうしたポートフォリオの厚みは、日常利用から高級レストラン、ギフト需要まで幅広い提案を可能にする。ホテルのレストランやバーにおいても、産地の物語や生産者の背景をメニュー上で伝えることで、ワインの付加価値を高める余地がある。

北欧・中東欧ワインが広げるペアリングの可能性

後半では、ソムリエ・ワイン講師の齋藤奈紀氏によるテイスティングデモが行なわれた。北欧産ワイン2種、中東欧産ワイン2種の計4種類を試飲し、それぞれの産地、品種、味わい、日本料理との相性が紹介された。
齋藤氏は、中東欧や北欧のワインについて、気候変動や美食文化の発展、さらにワイン愛好家の「新しい産地を知りたい」というニーズが注目を後押ししていると説明。中東欧には、グリュナーヴェルトリーナー、フルミント、ハールシュベリュー、アシルティコなど、多様な土着品種が存在する。ホテル・レストランにおけるワイン提案は、有名産地や定番品種だけでは差別化しにくい時代に入っている。EUワインの多様性は、料理との相性、サステナビリティ、産地の物語を重ね合わせることで、料飲部門に新たな提案軸をもたらす。

松島基機

Editor’s Note


本セミナーでは、ソムリエ・ワイン講師の齋藤奈紀氏によるテイスティングデモとして、北欧・中東欧を中心としたEUワイン4種が紹介された。スパークリング、白、ロゼ、赤を通じて、EUワインの多様性や土着品種、気候変動対応型品種、日本料理とのペアリングの可能性が示された。

テイスティングワイン4種

  • スパークリングワイン:Slavonija(スラヴォニア)/クロアチア・内陸部スラヴォニア地方/グラシェヴィナ100%。クロアチア本土で最も多く栽培される品種。極辛口から甘口まで幅広いタイプに対応する。
  • 白ワイン:Sjælland(シェラン)/デンマーク・ゼーランド島/ソラリス100%。早熟で、カビや霜への耐性を持つ品種。エルダーフラワーを思わせる繊細な香りが特徴。
  • ロゼワイン:Huși(フシュ)/ルーマニア東部・フシュ/ブスイオアカ・デ・ボホティン100%。限られた栽培面積で生産される希少品種。桃を思わせる甘くジューシーな風味を持つ。
  • 赤ワイン:Vipavska dolina(ヴィパウスカ・ドリナ)/スロベニア・プリモルスカ地方ヴィパヴァ渓谷/レフォシュク100%。2000年以上の歴史を持つ品種。スミレやハーブを思わせる香りと熟成ポテンシャルを備える。

HOTERES編集部

編集部

ホテル専門メディア『HOTERES』の編集チーム。創刊60年の専門誌「月刊HOTERES」と「HOTERES Digital」を横断し、経営、開発、投資、ブランド戦略、運営、食、人材といったテーマを軸に、取材および調査・分析を行っている。業界をリードする経営者やトップマネジメント、事業者・運営会社・投資主体への取材に加え、日本国内のホテル新規開業動向、ホテルチェーン一覧、売上高ランキングなどのデータ収集・整理を継続的に実施。マーケット・リサーチの視点も取り入れながら、ホテルを取り巻くビジネスの構造や意思決定の変化を多角的に提示している。