Archileon Design Lab株式会社(以下、当社)は、一級建築士による空間デザインと、3Dプリンティングを用いた建築用大型金型の技術開発を一体で行う東京大学発スタートアップです。自由曲面や複雑形状を短納期かつ合理的なコストで実装し、「そこにしかない、そこにあるべき空間」を広く届けることを目指しています。
ホテルは、空間の個性が「選ばれる理由」や客室単価に結びつきやすく、当社の技術が価値を生みやすい市場だと考えています。一方で現状は、コスト制約から規格化された内装が反復され、地域性やブランドの独自性が表れにくくなっています。加えて、宿泊客が評価するのは内装だけでなく、予約、接遇、食、地域体験までを含む一連の体験です。そのため、地域性を備えたハードと、ブランド、サービス、人材、マーケティングを一体で設計する必要があります。両者が分断されていることが現在の課題であり、「量から質」への転換期において、空間と運営体験を統合する余地は大きいと捉えています。

NEDO事業に2年連続採択、建築用3Dプリンティング技術の可能性
ホテル内装が均質化する主因は、発想不足ではなく、コスト制約によって「選べる形」が規格品に限られる点にあると考えます。自由曲面や複雑形状を手仕事で一点ずつ製作すると高額になり、従来の金型も大量生産を前提とするため、ホテル一棟程度の小ロットでは割高で採算が合いません。
そこで当社は、成形に用いる大型金型そのものを3Dプリンティングで製造します。金型製作をデジタル化することで、従来の金属金型による製作と比べ、コストを約5~8割削減し、納期を約4分の1に短縮しました(当社試算)。固有のデザインを、量産品に近い経済性で提供できるようになります。これにより、地域の意匠やブランドコンセプトに応じた形を、少量生産でも採用できます。
当社の建築用3Dプリンティング技術は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業/ディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)」において、2025年度・2026年度と2年連続で採択されています。2026年度は、事業化に向けた研究開発・実証を支援する躍進コースでの採択です。2年続けて審査を通過したことは、技術の新規性に加え、事業化計画の実現可能性についても外部の評価を受けた結果だと受け止めています。

地域に固有の意匠や素材を宿泊空間へ落とし込む
当社は、単なる部材供給ではなく、ホテル事業者、地域のデザイナー、職人、行政・DMO等とともに、「そこにしかない、そこにあるべきホテル」を構想・実装する共創パートナーを目指しています。その背景には、旅行者の関心が名所だけでなく、街並み、食、工芸、日常の風景といった地域固有の体験へ移っていることがあります。米紙ニューヨーク・タイムズの「2023年に行くべき52カ所」で盛岡市が2位に選ばれたことは、この傾向を象徴していると言えるでしょう。
自動運転等によって移動の制約が小さくなれば、交通面で選ばれてこなかった地域にも機会が広がり、ホテルには地域の魅力を体験として編集する力が求められます。地域が持つ文化、建物、運営知識と主体性を基盤に、当社は設計から金型製造までを一貫して担い、固有の意匠や素材を現代の宿泊空間へ翻訳していきます。開業後も宿泊者やスタッフの反応を共有し、改善を重ねることで、地域に長く根づく「50年後のホテル」を共に育ててまいります。
ホテルは“地域体験”のプラットフォームへ 時代の進化に呼応する入口となる
ホテルは「泊まる場所」から、地域固有の文化や暮らしに参加する「体験の場所」へ進化すると考えます。その背景には、三つの変化があります。
第一は、移動手段の変化です。自動運転等の普及により、アクセス面で選ばれにくかった地域も旅の目的地となり得ます。第二は、既存ストックの再評価です。短期間の改修によって、空き家や歴史的建造物に刻まれた記憶を、地域固有の宿泊価値へ転換できます。第三は、体験の深化です。自然、祭り、食、工芸、人との交流を、空間、サービス、物語、運営まで一体で設計すれば、宿泊者は地域を「見る」だけでなく、その時間や文化に参加できます。
これに対応するには、ハード更新とブランド、サービス、人材、マーケティングを連動させる必要があります。当社の技術により固有のデザインを合理的なコストで実装できれば、ホテルは地域体験の入口となり、観光、文化、暮らし、産業をつなぐプラットフォームへ発展すると考えます。
【プロフィール】
Archileon Design Lab株式会社
代表取締役CEO 平山 雄太
東京大学大学院新領域創成科学研究科修了、一級建築士。スペイン・IAAC(カタルーニャ先進建築大学院大学)への留学を契機に、デジタルファブリケーションを活用した建築デザインを研究。東京大学の研究職員として建築用3Dプリンティング技術を開発する一方、リノベーションやアートワークも実践。研究と事業の両面から、技術とデザインの融合に取り組む。